東京大学と東北大学は2026年10月1日、全国の教育委員会を対象に、学校防災における地域特性の把握と、地理情報システム(GIS)の活用実態を調べた研究成果を発表した。

調査では、校内や学校周辺の災害リスクが重視される一方、通学区域全体への着目は限定的だった。研究グループは、学校を中心とした安全管理と、地域に広がる災害リスクとの間に「空間的ミスマッチ」があると指摘している。

学校周辺から、通学区域全体へ視野を広げる

研究グループは、2025年11月から2026年1月にかけて、全国1,831の教育委員会にアンケートを配布。回答のあった266件を分析した。回収率は14.5%で、結果は回答機関の状況を示すものだ。

地域特性として重視されていたのは、浸水想定区域や土砂災害警戒区域への該当、避難場所、学校の立地などだった。一方、学校区内の防災資源や土地利用、人口構成などへの着目は少なかった。

学校の敷地や周辺を確認することに加え、子どもたちが暮らし、通学する地域全体を捉える必要性が示された。

GISを防災の実務に生かす支援が課題

地域特性を把握する方法として、Web-GISを利用していた割合は25.9%だった。また、教職員に地図・GISの活用支援を行う教育委員会は11.7%にとどまった。

GISは、地図上にさまざまな情報を重ね、位置関係や地域の特徴を確認する仕組みだ。今回の調査では、「地理院地図」や「重ねるハザードマップ」などの利用も対象としている。

研究グループは、GISを教材として使うだけでなく、学校防災の管理や意思決定にも活用することを期待している。そのためには、防災・ICT・教科教育など、部局を横断した連携も必要だとしている。

🌏場所に紐づく情報を、具体的な備えへ🌏

本研究で注目したいのは、防災を考える対象範囲と、実際に災害リスクが広がる範囲のずれだ。学校の位置だけでは、通学途中や自宅周辺で子どもたちが直面する状況まで捉えきれない。

例えば、学校や通学路、避難場所の位置に、浸水想定や地形などの情報を重ねれば、「通学路のどの区間を詳しく確認するべきか」「避難先までの経路にどのような危険があるか」を考える手掛かりになる。さらに、現地確認で得た気づきや地域の経験を場所に紐づけて残すことで、地図上の情報を実情に即した検討へつなげられる。

空間情報にさまざまな記録や知識を結びつけ、状況の理解と判断に生かす。これはまさに、GEOINTの本質である。

その価値を実際の備えにつなげるには、地図を用意することに加え、誰が情報を確認・更新し、学校や地域でどう共有するかという運用も重要になる。今回の研究は、空間情報を活用する技術と、それを日々の防災に生かす体制の両方を考える契機となる。

出典:東京大学・東北大学「学校防災を『学校』から『地域』へ―全国教育委員会調査から見えた地域理解とGIS活用の課題―」(2026年10月1日)